2008年に初めて発表した「雫」と名付けた半球型オブジェはその形状を同じくしながら、素材は石膏・コルク材・発泡スチロールと多様化しています。本来のオブジェとして制作の中心素材は石膏です。しかし当初の発想の中にオブジェを”水に浮かばせる”という計画があり、今回はその実現に向けて試行錯誤してきました。
コルク材の使用は浮力を得るための選択であり、耐水加工を施しました。支持体を水とすることとアクリルボックスの特性から、周辺の景色を映り込みによって取り込むことに成功したと思います。光の反射も外光の強弱の影響で表情を変えます。インスタレーションの場合、その空間構成に目を奪われがちですが、今展においては1つ1つのオブジェのもつ世界観を鑑賞してもらいたいと思っています。それゆえ、「雫」は独立した水面に浮遊しています。四角いボックスの中央に位置する「雫」は磁力によって固定されていて中心から外れることはないのです。まずは象徴的な見せ方にこだわりたかったのです。
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